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2009年 06月 28日
ハナレザルにどう対処するか?
 さて、前回久しぶりに書いた記事を読み返してみましたら、3回も「容易な事ではありません」が出てきました。たしかに、ハナレザルをどうすれば良いかという問題は簡単に答えが見つかるとは思えませんが、しかしこのままでは、愚痴を書いただけに終わってしまいますので、続編を書いてみます。

 一カ所に定着している個体は檻で捕獲できる事もありますが、広い範囲を動き回る場合はよほど運が良いか、エサのない季節でもないと檻に入りません。被害の少ない山間部に追い立てたとしても、追い立てをやめればすぐに戻ってくるでしょう。発信器のついていない単独あるいは少数の集団を適格な方向へ追い立てること自体、困難な作業です。

 捕獲も追い立ても困難だとすると、出発点に戻って、ハナレザルが来ないようにするしかなさそうです。リスクを冒してまで、人目に触れる場所にサルがやってくるのは、利益がある、いい思いができるからでしょう。けっして、人間に追いかけられるのが好きでやってくるわけは・・・・・ここでちょっと待てよ、ですが、群れの中の若ザルの一部は、鬼ごっこやかくれんぼを楽しんでいるのではないかと感じる事がよくあります。わざとギリギリまで逃げず、逃げる距離も短く、逃げた先で尻の横を掻いてみせる。ほかの仲間が一目散に逃げて行くのに、数頭が大木の陰に隠れて、見つかるまでじっとしている。どうもサルに遊ばれているような事があります。サルとカラスは遊ぶといいますが、人間の2歳程度の知能だとすれば、この程度の遊びを楽しんでいるかもしれません。

 横道にそれましたが、サルがやってこないようにするには、来てもいい思いができないのに恐い目に遭う、という状態にすることですね。メスザルは群れの中にいますから、ハナレザルは恐い思いを振り切ってメスのもとに通ってくる訳ではありません。やはり、色気ではなく食い気ですよね。このブログの左側にずらっと参考図書を列記しましたが、その一番下「これならできる 獣害対策」(井上雅央著)には、サルが食べると「人が怒るエサ」と「食べても怒らないエサ」があるという、素朴ですが重要な問題が提起されています。

今の時期で言うなら、畑のジャガイモやネギは食べると人が怒るエサ、畑の横のサクラやクワの実は人が怒らないエサという事になります。今朝も、目の前の畑のネギとジャガイモには目もくれずに、クワの実を食べていました。しかし、そこでクワの実を黙って食べさせることは、そこにサルを餌付けした事になります。その場所は安全に食べられるから、ぐるっと回って何日か後にまたやってきます。その時に、大好きなクワの実が終わっていれば、ナスでもキュウリでも、手当り次第に食べて行くことになるわけです。

 サルが群れでくるエリアでは、畑や家庭菜園を柵で囲う事も、エサになるものを極力減らすことも、チューリップをやめてスイセンにする事も、やれる事は何でも・・・・・と努力する事はいいのですが、サクラもヤマボウシもイチイもグミもモミジもクリもハルニレもミズキもモモも・・・みんな切ってしまえとはとても言えません。まして、たまにハナレザルがやってくる程度のところでは、なおのこと言えません。

 とすれば、恐い思いをさせる方に力を入れるしかなさそうです。先日の古宿からの追い出しでは、3kmほど東で群れ本体を追っていたところへ、国道を通って現場に来た人が、来る途中でサルを見たと教えてくれました。10分ほどしてそこへ行くと、教えられた場所の国道の反対側80mで何人かの住民が騒いでいました。その人たちが指差す先では、また数人の人が騒いだり棒を振り回しています。2頭のサルはそこから50m先で旧中山道を西へ逃げて行きます。そちらには誰も出ていないので、怒鳴り声・ホイッスル・爆竹で騒々しく追うと、また何人か出てきました。最後は、集落のはずれから一人で追ったのですが、被害は少なかったようです。

 ハナレザルの追い払いがうまく行く一番の近道は、その場所の住民が大勢出て、騒いで追い回す事につきるようです。井上さんの本の後半で強調されている事は、対策の順序「みんなで勉強、守れる畑、囲って追って、ダメなら捕獲」  日頃から集落ごとに勉強して、エサを食われにくい集落作り、サルがやってきたら見つけた人が騒いで、みんなで追い出す。役場に電話しても、役場から現場のサル追い隊員に電話が行き、ハナレザルの所につくまでには、救急車ではないので20分ぐらいかかります。その頃には、既に畑は荒らされ、サル追い隊員にむかってブツブツ不平をいう住民だけが残っていて、サルはどこかへ行ってしまっているのが現状です。

 追記: 5年ほど前から、周囲の関係者に井上雅央さんの本をお勧めしてきました。ブログの左側に列記した本は、サル問題を考える上で、どれもたいへん参考になりましたが、現場でサルを追い、住民とさあこれからどうしようかと話し合うときには、なんと言っても井上さんの本です。それで、みんなに「いのうえまさお、イノウエマサオ・・・」とお勧めしてきたのですが、一昨日サル追い隊員の一人から「最後まで読んだら、名前の読み方が違うみたい」と指摘されました。末尾の経歴欄には「いのうえまさてる」となっています。思い込みというのは、恐ろしいものです。井上さん、ごめんなさい。         (文責 寺山光廣)

by k-saru-net | 2009-06-28 14:15 | メッセージ


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