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2005年 06月 07日
山に追い上げる    S.M.2
新緑が美しく、さわやかな風、半そでになりたくなる瞬間もあり、最近、とてもいい
季節になったなと感じます。

サル追いをしていると、軽井沢の地元の方や別荘地の定住者の方たちと話す機会があ
ります。以前にも書きましたが、私たちは「サルを山へ帰そうと考え、観察したり、被害から遠ざけようと追い払いや、山方向へあるいは、防衛ラインの向こう側へと追い上げを実践しています。」と説明します。(こんなにていねいには説明していませんが、やっていることは事実です。)

すると、必ずといっていいほど、帰ってくる答えのひとつに、「山への追い上げはむずかしいのではないか。」ということばでした。それに対して、私は理路整然と「こうだから絶対に大丈夫だ。」とは答えられません。実際のところ、私の中でもわからないことばかりなのですから。今はとにかく、サルの現場で行っている作業を継続していきながら、ひとつひとつ出てくる疑問を解明していくしか道はないような気がします。
とりあえず、「やってみなければわからないでしょ。」「何もしないでいるよりましでしょ。」です。

日本国内で果たして、サルを奥山へ追い上げる事をしている場所などあるのだろうか
と思っていましたが、今、読んでいる本の中に見つけました。紹介します。

石川県の白山ジライ谷野猿公苑が餌付けを止めて群れを野生に戻す努力を始めたそう
です。(95年のこと)もちろん、サルが増えすぎ、多くの猿害が発生したためです。
繰りかえし協議をした結果、餌付けを止め「同時に野猿広場にこれまで通り、村から
一人配置して、群れの追い上げ、追い払いを行うことと、観光客に対して、周辺の自
然のガイドを行うことにした。」

「野生に戻す試みの実に見事な例である」と『サルとつきあう』の和田一雄さんは書
いています。追い上げる山は豊かな天然林であった、とも記されています。長期の展望として、その将来を野生化にありとして、実行した態度は高く評価される
べきと。

軽井沢のサルは白山ジライ谷野猿公苑のように公然と餌付けされたサルではありませ
んが、軽井沢の観光客や工事現場の業者さんやあるいは別荘の方による、餌付けはずいぶん
前からされていたと聞きます。そのために、長期にかけて、人馴れを助長させてしまった結果、軽井沢町に棲みついてしまったわけです。

軽井沢町はピッキオ、そのあと、猟友会に委託し宣伝や追い払い、末は全頭駆除を打
ちだすなど、その場限りの対応のみで軽井沢町のサルの群れを将来、どうしょうという展望
を示してはいません。それに対して、私たちは町からの具体案を待ち望みながら連日少数の人間だけで群れを追い上げたり、観察をしたりしています。

「共生」という考え方も聞きますが、実際、町の住民の被害感情の多いこと、強いこ
とを直接感じている中で私は完全にそれは不可能と思っています。机上だけの空論で
この問題は解決していかないことを、強く感じています。ですから、「共生」という考え方が公の方角から聞こえてきたとしても、まったく問題視していません。

今後、私たちが働きかけていく相手を、行政、そして、地道ながら被害者である住民
のひとりひとりに訴えかけ、「棲み分け」「追い上げ」への理解をひろめつつ、力強
い明確な展望が町から発せられることを期待していきたいと考えています。

そのために、普及啓発の一端として、5月19日の朝日新聞の切り抜きをコピーした
チラシを住民に機会あるごとに渡し、読んでもらい、又、観光客に向けてのチラシを配っていくなどの行動も起こしていきたいと考えています。

by k-saru-net | 2005-06-07 09:24 | メッセージ


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