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2005年 11月 25日
サル追いノート 2005.11.2〜25 「厳しい冬の始まり:エサ不足の影響」 報告 T. M.
寒い朝はマイナス5度ぐらいまで下がり、風向きによっては何度か雪も舞いましたが、
比較的穏やかな晩秋です。

10月下旬から始まったサルの群れの交尾期は11月下旬に入っても続いていますが、一
時のような騒がしさは感じられません。個々のメスザルの発情には周期性があるので
しょうが、群れ全体にも波があるのかもしれません。あるいは、クリの不作でエサ不
足のため、元気がないのでしょうか。

10月末ごろから10日間ほど、ハナコを含む一群が時には群れから2キロ以上離れて、
一時は群れの分裂につながる可能性も検討しましたが、11月8日の夕方には群れに戻
り、その後の群れは比較的広い範囲に散らばりながらも、一団で行動しています。ハ
ナコ等、今年出産しなかったメスの発情が早く、その時期まだ群れのオスの準備が間
に合わず、他から来たハナレザルについて群れから離れた可能性もあります。この2
日間(11月22・23日)、ハナコは群れから400mほど離れて、大きなオスザル1頭とそ
れと争う中型オス数頭と共に行動していました。そのグループには、赤ん坊や子ども
のサルはいないようです。

ハナコの発信器が次第に弱くなってきていたため、11月4日に新しい発信器が群れの
メスザルに取り付けられました。ハナコより一回り大きい、赤ん坊をつれた元気なメ
スで、マロンと名付けられました。以前からハナコは群れの周辺部にいることが多かっ
たのですが、マロンはその後の観察では群れの中心部にいるので、偶然ではあります
が群れの追跡のためには良い人選?でした。 
                       
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左:<発信器が取り付けられたマロン>  
右:<オニグルミを割るマロン。アンテナは囓られてヨレヨレに変形してる。>

鶴溜や三笠パークなど、山間部では落ち葉をかきわけてクリの実を探していますが、
里ではまだ残っているイチイの実を食べています。その他、ミツバウツギの実やムラ
サキシキブの実に群がっていますが、エサとしての量はたいしたことはないでしょう。
畑にはまだダイコンが残っていますが、むしろ漬物用に干してあるダイコンをねらっ
ていました。干してあるネギや軒下の干し柿も食べられていましたが、いずれも群れ
全体がねらっている様子はなく、4・5頭〜最大10頭ほどが執着するようです。これか
らは色あざやかなミカンがこたつの上に置かれていることが多くなりますが、陽当た
りの良い部屋は外から丸見えで、サルにとっては刺激的な光景です。

ダイコンは庭に干してある事が多いので、サルが来れば気づいて追い払いに出てくる
人もいます。誰も出てこない時は、爆竹をならして知らせるようにしています。干し
柿は会社の事務所の軒につるしてあり、早朝サルが次々たぐり寄せて囓っていたので、
社員の出社時刻後に電話で知らせておきました。夏の畑など、持ち主がサルの被害に
気づかない事もあるでしょう。トマトやキュウリ、漬物用の野菜など、生で食べるも
のの場合は寄生虫や感染症の心配もあります。干してある洗濯物や布団も汚染される
可能性があります。サル対策の基本として、人里での共生は無理であると考えるべき
で、特に市街地や農地からは徹底した追い払いが必要と思われます。

上の原の北端付近で2度、自由に走り回る大型犬に追われて、群れの行動が制限され
るという事がありました。前後の移動ルートをみると、犬がいる間(1時間以上)群
れはかなり影響を受けていることがわかります。サルは木や家の屋根に登ってしまう
ので、犬を使って一定方向への追い上げは難しそうですが、群れをそのエリアに入れ
ないという防衛ラインには使えるかもしれません。離山地区では、犬の吠える声が群
れの襲来を知らせる役には立っています。

10月16日、長野県森林保全課の主催で、軽井沢のサル対策検討会が役場会議室で開か
れました。参加者約60名の他、オブザーバーや報道関係者も多数あり、午前中は班に
分かれて町内の現場チェック。午後は全員で報告と検討が行われました。県内で始め
ての試みであり、第1回ということで、対策については検討を深める所まではいたり
ませんでしたが、様々な立場の関係者が集まって考えを述べ合ったことは、出発点と
して有意義だったと思います。行政主催の会議というと、とかく結論がはじめから決
まっているセレモニーになりがちですが、現状を把握し出来ることを模索しようとい
うスタンスは出席者の共通認識になったと思います。

しかしこれはあくまでも出発点であって、今後さらに現状を多角的に検証し、軽井沢
におけるサルと人間の関係の長期的ビジョンを考えながら、現在何が出来るのかを具
体化する作業が引き続き行われない限り対策は一歩も進みません。被害と現在行われ
ている対策の検証については、多くの監視隊メンバーや住民が参加しやすい休日か夜
の会議がいいでしょう。今回は全般的な検討でしたが、今後は議論を深めるために課
題をしぼった検討会を積み重ねていく事がのぞまれます。

11月5日、富士吉田市の山梨県環境科学研究所で行われたセミナー「野生動物の被害
管理の現状と未来」に参加しました。研究者サイドからの講演が中心でしたが、いわ
ゆる第三者的研究ではなく、日頃の現場活動にねざした報告で、7月に参加した犬山
市の霊長類研究所のセミナー同様、得るものの多い一日でした。「国際セミナー」と
いう名前にも関わらず、周辺の住民が数多く参加していたのも、当研究所の日常的活
動姿勢が感じられるものでした。

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<ムラサキシキブの実を食べる>          <ヤマガシュウの実を食べる>

今朝(11月25日)借宿帰農に出た群れの一部が、カボチャ数個、ダイコン、ネギの被
害を出しました。カボチャは既に収穫期を過ぎていると思われるので、取り残しの片
づけを指導するべきでしょう。ダイコン、ネギについては、この時期は大面積の畑で
はないので、ポールとネットによる防護で被害を防げるでしょう。

実りの秋とはいえ、クリの不作で深刻なエサ不足。霜で白くなったシロツメクサの葉
やヤマガシュウの干からびた黒い実を食べています。ここ数年、冬の間エサ場として
きた利用してきたエリアにエサがないこの冬は、群れの遊動域が変わる可能性も考え
られます。西や南への拡大を警戒するとともに、エサ場としての魅力が減っている現
在の遊動域から北へずらす良い機会かもしれません。検討会の継続・深化を切望して
います。

前回の報告以後の「サル追い日誌」を記載します。( )内の位置情報は野生動物監
視隊の報告によるものです。
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11月2日 朝  雲場池西100m。 群れは東向き斜面に。交尾するサルあり。
     夕方 三笠パーク幹線道路9〜11番で群れを見るが、信号音は弱く、監視隊
       の位置報告では一本松南200mで、約2キロのずれ。

11月3日 朝 三笠通りでは信号音は受信されず。監視隊報告では旧軽ロータリー。
    夕方 離山北東斜面の別荘地で信号音。監視隊報告は一本松南西500m。

11月4日 朝 鹿島の森ホテルを通過して三笠パーク方向へ。群れの一部は早朝から
       三笠パーク下部にいた模様。ピッキオによる発信器の取り付け。
    夕方 ハナコの信号音は星野温泉入り口付近で、新しいマロンの信号音は鶴
       溜山頂北200m。約1.5キロ離れる。

11月5日 朝 鶴溜北の前田公園。マロンを含む一群が、クリを探しながら東に移動。
       ハナコの信号音は入らず。
    夕方 (三笠パークバス停西北500m)山梨のセミナー出席。

11月6日 朝 三笠パーク最上部の20番付近でハナコを含む10頭ほどを目視。鶴溜北
       側の前田公園東でマロンを含む数頭を見る。
    夕方 (せきれい橋南300m)

11月7日 朝 上の原北部。マロンを含む一群(成獣10頭以上)はR146東からホテル・
       ブレストンコートを通過、西の千代田区寮へ。ハナコの信号音は鶴溜
       山頂付近。2キロ以上離れる。
    夕方 マロンを含む一群は鶴溜山頂北側。昼間上の原で犬に追われた模様。

11月8日 朝 マロンを含む群れは鶴溜山頂西側。ハナコの信号音は三笠パーク〜一
       本松〜鹿島の森ホテル〜離山登山道で受信。最後は鶴溜東に移動。
    夕方 三井の森下部の三叉路東。マロンとハナコの信号音が一致する。群れ
       は南へ移動中。

11月9日 朝 石山下。マロン・ハナコともに湯川東岸の第一法規寮から移動。
    夕方 離山集落で、住民2名と追い払い。マロン・ハナコ両信号音。

11月10日 朝 離山集落へ数頭侵入。追い払い。信号音両方。
    夕方 旧軽ロータリー南西で両信号音。

11月11日 朝 六本辻北東300mで、住民1名と西へ追う。
    夕方 (東部小北東400m)

11月12日 朝 雲場池北端西側。イチイ・ミツバウツギの実を食べる。

11月13日 朝 新軽井沢東雲交差点東側から西・鱒池方向へ移動。住民2名と追う。
    夕方 (一本松東100m)

11月14日 朝 旧軽教会通りでダイコン(干し)をねらう。住民1名と一本松方向へ
       追う。 
    夕方 三笠パーク8〜15番。ムラサキシキブ・イチイ・ミツバウツギの実を
       食べる。

11月15日 朝 三笠パーク15〜17番で上へ移動中。
    夕方 (一本松南西500m)

11月16日 朝 雲場池北端西100mの斜面。イチイを食べる。マロンの信号音は弱。
    夕方 軽井沢高校東・北で数頭目視。

11月17日 朝 軽井沢高校東側から、東部小西の住宅街に侵入。爆竹で北へ追う。
    夕方 野澤橋と雲場池間で両信号音最大。

11月18日 朝 東部小西側の住宅街に侵入、追い払い。
    夕方 軽高の北・西。

11月19日 朝 数頭が離山集落の家庭菜園に侵入、追い払い。
    夕方 (軽井沢病院北300m)

11月20日 朝 中央公民館の北・西。長倉公園の北側でダイコンをねらう。住民2名
       と追い払い。
    夕方 上の原北端の三叉路東側で両信号音。

11月21日 朝 千ヶ滝西区事務所の干し柿を食べる。事務所に電話するが、現在もそ
       のまま。
    夕方 (せせらぎの里バス停南4〜500m)

11月22日 朝 マロンを含む群れは千ヶ滝西区あやめが原バス停付近。ハナコと、大
       きいオス1頭、中ぐらいのオス数頭が小谷が沢西で争う。
    
11月23日 朝 千ヶ滝西区歌鳥の里バス停北から群れは北上、NEC寮へ。途中、霜の
        降りたシロツメクサを食べる。ハナコ他数頭は400m南。

11月24日 朝 せせらぎの里バス停西、外周線の両側で、オニグルミ・ヤマガシュウ
       の実を食べる。用水の水を飲む。
    夕方 横道下バス停南

11月25日 朝 借宿帰農へ10数頭侵入。カボチャ数個・ダイコン・ネギの被害。住 
       民3名と追い払い。
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by k-saru-net | 2005-11-25 22:41 | サル追いノート
2005年 11月 02日
サル追いノート 2005.10.18〜11/1 発情期の始まりと畑の被害再発
日に日に夜明けが遅くなり、朝の観察が楽になりましたが、遅くなった分だけ本業の
仕事時間に食い込んでくるのがちょっとつらいところ。紅葉の盛りをむかえた現在、
寒い日は零度前後、これから冬本番になると、さらに20度近く下がります。

[ 発情期の始まり ]
    前回の報告の後、23日には冷たい西風が吹いて、浅間山の初冠雪。サルの群
れは鶴溜山頂の西400m程の三井の森別荘地最上部で、朝日にあたりながら毛繕いを
したりイチイの実を食べたりしていた時、700mほど東の前田公園に2頭のサルが交
尾を繰り返していました。メスの顔はかなり赤く変化しているのに対し、オスは夏と
変わらない顔色。行動も雌の方が積極的な感じでした。

群れの方は静かで、その後4日間は毎朝変わった様子がなかったのですが、28日の朝
には上の原の北端三叉路付近で、騒がしく無秩序な動きをしていました。前夜の泊ま
り場の位置から考えて、早朝に湯川の東岸は移動する事が予想されていたのですが、
メス数頭が発情していて、樹上や電線に上で上唇にしわを寄せながら口を突きだし、
フェー・ホェー・フォッ・ホッというような声を出しています。既に尻に精液が白く
かたまって着いているメスが電線の上だけで2頭、樹上でも騒いでいて、屋根の上の
ペアは静かに交尾をくりかえしています。その状態が1時間近以上続き、そのうえ大
型犬1頭が群れを追い回したため、赤ん坊連れのサル達も移動せず、周囲の住民がう
るさがって追い始めました。無粋と思いつつも爆竹やロケット花火などで追ってみま
したが、あまり効果はありませんでした。29日、30日は湯川の反対側、鶴溜山頂付近
で同様な交尾行動が見られました。メスの中には、尻がパンパンにはれてふくらみ、
赤というよりビーツやソルダムの色に近い個体もいます。 
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          上: <口をつきだして鳴くメス>
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              上: <尻の変化>


[ ニンジン・ダイコン・カボチャの被害 ] 
    今年はクリが不作のため、農業被害が再び出ることが予想されたのですが、
11月1日早朝、離山地区公民館西の家庭菜園が被害にあいました。発信器の電波がそ
のあたりからは検出されず、群れの侵入に気づいた時は既に20頭ほどが畑にいたよう
です。住民2人が追い払いをしていました。ニンジン20本、ダイコン5本、カボチャ
10個ほどが食われていました。特にニンジンは葉を残して食べ尽くしたものが多く、
追われて逃げながらも持っていって途中で食べた跡がありました。ダイコンとカボチャ
は囓りかけが残っています。アパートの屋根の上のテレビアンテナが倒されていまし
た。爆竹・ロケット花火・パチンコで追っているとさらに何人もの住民が追い払いを
始めましたので、早めに知らせていれば被害は防げたでしょう。

自然のエサが少ないこの冬はこれから、畑への侵入が続く可能性もありますが、後し
ばらくで農期も終わります。未収穫のまま放置される農産物の始末や、干してある収
穫物、貯蔵所・ムロの管理を徹底する必要がありそうです。

10月18日以降の「サル追い日誌」を記載します。日暮れが早く、夕方の観測が出来な
かった時は「野生動物監視隊」の泊まり場報告を( )の中に記してあります。
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10月18日 朝  旧軽井沢銀座通り東 テニスコート付近を東に移動。実が付いてい
        るクリの木の樹上で、数頭がクリを食べる。
      夕  新軽井沢 東雲交差点南西で信号音。駅から500mのメインスト
リート脇で泊まる。

10月19日 朝  新軽井沢東雲交差点西側の民家で騒ぐのを追い払う。西に移動中、
        民家の軒に干してあったクルミとトウモロコシを食べる。
      夕  (軽井沢高校北200m)

10月20日 朝  軽井沢高校北側に広く散開。移動方向不明。
      夕  雲場池北、ロッテクラブ東のモミ林に泊まる

10月21日 朝  鹿島の森ホテル三叉路周辺。ダンコウバイの赤や黒い実を食べる。
      夕  (三笠パークバス停西400m)

10月22日 朝  三笠パーク16番付近に広く散開。
      夕  (鶴溜山頂付近)

10月23日 朝  鶴溜山頂と野鳥の森裏口の中間に散開。浅間山初冠雪。木枯らしの
        中で日向ぼっこ。イチイの実を食べる。前田公園で2頭が交尾行動。
      夕  せきれい橋南の東岸に泊まる。

10月24日 朝  せきれい橋上とその南側で湯川を西に渡る。監視隊が頭数計測。国
        道146の西側の家庭菜園(ダイコン・ネギ)は無事の様子。
      夕  (せせらぎの里バス停南400m)

10月25日 朝  せせらぎの里バス停西200m〜500mに散開。6時ごろ、古宿公民館
        付近にハナレザル1頭、北へ追い払う。
      夕  (千ヶ滝西区あやめが原バス停南西500m)

10月26日 朝  あやめが原バス停付近で弱い信号音。

10月27日 朝  あやめが原バス停周囲に広く散開。
      夕  上の原北端の三叉路東側に泊まる。

10月28日 朝  上の原北端三叉路周辺。メス数頭が発情、独特の呼び声と交尾行動
        が見られる。洋種の大型犬1頭が追い回す。追い払い効果なし。
      昼  湯川の東岸、蕨尾橋東。
      夕  三井の森 ヤマドリの路分岐点周辺。

10月29日 朝  ヤマドリの路でメス数頭が独特の声で鳴く、フェー ホ ホ
 ホェー
      夕  鶴溜山頂北側の斜面

10月30日 朝  鶴溜山頂直下の北斜面で落ちているクリを食べる。発情メス2頭。
      昼  三笠パーク西南端の軌道跡付近。
      夕  (軽井沢高校北200m)

10月31日 朝  離山登山道で数頭見るが、信号音は登山道中途中で消える。雲場池
        で弱い信号音。移動先不明。(離山北面)
      夕  軽井沢高校付近で信号音。

11月1日 朝  離山地区の家庭菜園被害。ニンジン20、ダイコン5、カボチャ10。北
       側へ追い払う。住民7〜8人追い払い。信号音は離山では聞かれず、西
       800mの資料館から中学校付近で強い。
     夕  (東部小学校北東500m)

以上  2005.11.2. 報告   軽井沢 サル・ネット   T. M.
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by k-saru-net | 2005-11-02 08:59 | サル追いノート