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2010年 06月 07日
野生動物の交通事故  2010年6月7日
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  昨日、国道18号の西部小東でニホンジカが車にはねられて死んでいたようです。話を聞いて私が行った時には、既に死体は片付けられていて、道路上に血痕だけが残っていました。(上の写真は6月4日早朝、上田・佐久地方から諏訪地方にぬける和田峠北の国道での事故写真です)。甲信地方では、ニホンジカが爆発的といえるほどの増え方で、農林業被害の他にもこのような交通事故が多発しています。信州の東端にある軽井沢も例外ではなく、21年度は町内で19頭のシカが事故死しています。写真の現場は、周辺に小規模の集落があるとはいえ、環境としては山地であり、シカが道に飛び出してきても不思議ではないのですが、軽井沢町の方は小学校の目の前で周囲に林や畑はありますが、どちらかと言えば市街地と言うべき環境です。

 ニホンジカの事故はほとんどが夜間におきますので、車はなかなかよけきれないようです。イノシシ(町内のイノシシ事故死は21年度8頭)やシカのような大型動物では、よほど頑丈なトラックでもないかぎりは、車の損傷も大きく、人身事故につながる可能性もあります。夜間の国道では県外車が多いため、大きな問題にはなっていないかもしれませんが、車が壊れたというボヤキは町内の人々からも聞かれます。朝になってから国道を横断することが多いニホンザルの群れでは、児童の登校時間帯の事故には特に注意が必要になっています。

 本来、生きている野生動物は法律上「無主物」(誰の所有でもない)という扱いのようですが、近年野生動物被害の増加にともない、行政が「保護管理計画」を定め、税金を投入して保護と管理をすすめています。絶滅が心配される動物の保護と同時に、増えすぎて生態系全体のバランスを壊したり、人間の生活を壊す可能性のある動物の個体数管理や生息域・生息環境管理は不可欠です。

 無主物であれば事故の責任は当事者にあるという事でしょうが、行政が予算と権限を持って管理する事になると、被害に対する責任問題が起きる可能性があります。例えば、絶滅の心配があるツキノワグマの場合、集落や農地に出てきたものを捕まえて、人間の恐さをいろいろと教えて山奥で放すという「学習放獣」が行われます。現状では対策の一つとして重要な方法ですが、同じクマが再度被害を起こす事も実際にあります。とりわけそれが人身被害であれば、微妙な問題に発展する可能性もあるでしょう。

 地域全体の問題として、現状の客観的な把握、対策の検討と合意が必要になりますが、とかく野生動物問題に関しては、行政側の情報公開への消極性、「可哀想な動物」という愛護論、「殺してしまえ」という被害者感情、「山に餌を増やそう」という大雑把な運動などが交錯し、まだまだ試行錯誤の状態です。軽井沢町は、近隣市町村に較べるとひじょうに多い額の税金を、野生動物対策につぎ込んでいます。その事自体は評価すべきですが、その効果の検証や地域住民を含む対策の検討や合意については、まったく不十分と言わざるを得ません。
        (シカ、イノシシの町内事故死数は役場の集計から引用しました)

by k-saru-net | 2010-06-07 21:19 | メッセージ


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