2010年 07月 04日
![]() 上の写真は2010年5月14日撮影した、レッドと呼ばれている発信器をつけたメスザルとその新生児です。 現在、町役場では7人の職員が軽井沢群(K群)に交代ではりついています。3年前に、それまでの猟友会による監視活動から、推定3倍以上の予算をつけて、臨時職員を雇用し、サルの追い払いを始めました。それまで、早朝にボランティア(旧軽井沢地区の対策部会等)が山地に追い立てた群れは、猟友会が担当する昼間、再度市街地に侵入し被害を出すという事が続いていました。 その時期、大量捕獲をきっかけにK群では群れの中のグループ化が進み、次第に山地への追い立てが難しくなります。グループ化については、また別に書きたいと思いますが、役場に交代した当初はかなり積極的に追い立てを行っていました。現在、被害が起きている現場からの追い払いは出来ていますが、望ましい方向への制御は出来なくなってきました。去年から、市街地内やそれに近接する別荘地を回遊することが多くなっています。遊動域は人里に集中してきています。 サル追いについては、各地で被害が起きている現場からの「追い払い」が行われ、一部では遊動域を人里から山へ移す目的の「追い上げ」の可能性が考えられていました。被害が起きる場所から比較的起きにくい方向へ、群れを制御しながら追っていた我々ボランティアのやっていたことに対し、「追い立て」という呼び方を、長野県環境保全研究所の陸さんが提唱されました。「追い立て」を継続することで、次第に「追い上げ」につながることを期待していました。現在は遊動域として利用されていない東北部の山地(国有林)の縁(白糸ハイランドウェー)まで、当時は度々追い立てが出来ていました。3年前に較べると、現在の遊動域は縮小し、市街地と別荘地に集中しています。 対策の目標・ビジョン、方法論、結果の検証などのないまま、多額の予算と多くの職員を使っていますが、3年前の追い立てに比較すると、現在群れの制御に関して状況は後退しています。これまでの対策と結果を、役場以外の関係者を含めて検証し、システムを変える必要があります。一年に一回、一時間半の対策協議会(野生動物全般)での検討だけでは、まったく不十分です。 阪神大震災の後、災害対策について「自助・共助・公助」という概念が言われています。災害に際して、自分で対処できる力をつける「自助」、周囲の人たちと助け合う「共助」、行政が助ける「公助」の三本立てで対策を組み立てるということです。 この考え方でサル対策を考えてみます。家に侵入されないように戸締まりを徹底したり、畑や家庭菜園にネットや電気柵を張るのが「自助」。イノシシやクマのような危険がないサルの「追い払い」も、お年寄りなどの困難な場合もありますが、出来るだけ「自助」するのが望ましいことです。最低限の「追い払い」は素早く自分ですることが被害を減らし、その場所がサルにとって望ましくない場所と認識させることにつながります。 集落内外の環境整備(野生動物にとって魅力のない環境作り)は一軒だけでは効果がありません。集落から被害のでない方向への「追い立て」も、時間帯にもよりますが、集落全体で取り組む「共助」が効果的です。旧軽地区で対策部会が行った朝食前のサル追いは明らかに効果があり、継続的に行われるうちにサルの方も「追い立て」られる事が習慣化して、手際良く移動させられるようになりました。昼間でも、地域の住民が何人か追い立てに参加すれば、役場職員だけでやるより効果が上がるでしょう。 「公助」の役割は、個体数調整や有害駆除の他、「自助」「共助」のシステムをスムーズに動かす事も重要な仕事です。電気柵に対する補助はそれにあたるでしょう。しかし現在、地域住民による「自助・共助]にとって一番必要な野生動物の情報が伝わりません。サルの位置情報は、夕方のFM 軽井沢モンキーリポートは6時前に一回だけ放送されます。役場のホームページにあるサル・クマ ナビネットは翌朝まで更新されません。「自助・共助」の出発点である情報が伝わりません。 役場の対策予算や人員が増えるにしたがい、サルが周囲に来ても苦情を言う以外、一般の住民はほとんどが何もしないことが多くなりました。役場に任せて、旧軽のボランティアが活動をやめた昨年から、旧軽の中心部に群れが再び入るようになりました。たまに自前のBB弾銃やパチンコを持って出てくる住民もいます。現場で職員がトランシーバーやBB弾銃を貸し出せれば、共同歩調でスムーズに「追い立て」が出来るでしょう。住民が「苦情とあきらめ」から「自助・共助」に転換することで、対策は大きく進むでしょう。その前に役場の意識転換が必要です。 [ 追記 ] 7月8日 役場では7月1日から、夕方5時のサル(K群)位置情報をメール配信を始めました。軽井沢町役場のホームページから入って、[ トップページ各種ごあんないくらし>>環境メール配信サービス>>メール配信サービスのご案内 ] で登録しますと、毎日自動的に配信されるそうです。このシステムは役に立ちそうです。
by k-saru-net
| 2010-07-04 22:45
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![]() 広く豊かな自然がありながら、市街地や農地を荒し回る軽井沢のニホンザル。人間とサルの望ましい関係を、観察と対策の実践の中から模索する人々のネットワークをめざしています。 by k-saru-net カテゴリ
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