2006年 03月 04日
前回の報告から一月半が経ってしまいました。昨年の12月から一月中旬までの寒さに較べると、その後はむしろ暖冬に転じた印象です。今後の気象は判りませんが、ここまでは季節の移り変わりが1ヶ月早く巡った感じです。以前の報告で書きましたが、昨年の秋はクリやドングリなど冬場のカロリー源になる堅果類が全くの不作で、昨春生まれた赤ん坊サルの多くが冬越し出来ない可能性も考えたのですが、今のところ脱落は見られていません。少ないエサを求めて広範囲に移動するのではないかと考えていましたが、昨冬の誘導域の内、離山の北・西側(三笠パーク・三井の森別荘地・鶴溜地区)が利用されておらず、千ヶ滝西区の利用も少なく、明らかに誘導域はせばまって、動きが少なくなっています。草の種やモミの種?など、一定量食べるのに時間がかかるエサに依存しているため、移動する余裕がないのかもしれません。いずれにしても、冬の始めに考えた予想は今のところはずれていて、思いこみにとらわれない観察の重要性を痛感させられます。 豊作だったイチイの実が終わった後は、これと言ってきまったエサはなく、草の実や根と緑の部分、地面に落ちている実や種、木の皮など手当たり次第食べています。ドングリがたくさん落ちている木が1本だけあったところでは10頭ずつぐらいの3グループが順番に食べていました。去年の冬も時々単独で食べる事がありましたが、大勢で一斉に食べるのはドングリのあくが抜ける春先になってからでした。実が異常なほどたくさんぶら下がっているニセアカシア?の大木が1本だけ鳥ヶ坂下にあり、雪のあと十数頭が群がって食べていましたが、実を食べ尽くす事はなく1時間ほどで移動していきました。木の皮は去年もそうでしたが、歯形が残るほど直接囓りついて食べるのですが、群馬県側の群れのように皮を剥ぐ事はあまりないようです。軽井沢高校の北の別荘地では、ツリバナの樹皮を囓っていました。 ![]() <1/17草を食べる> ![]() <2/7ニセアカシアの実に群がる> ![]() <2/9サクラの枝を囓る> 長倉神社境内で地面にモミの実が翼片に分解してびっしり落ちているところでは細かいモミの種を次々拾って食べているように見えました。昨年の今頃はクリやクルミの他、樹皮や冬芽、ササの葉などをもっと食べていましたが、今年は雪がほとんどないため地面に落ちている実や種を食べているようです。小さくても実や種の方がエサとしての価値が高いということなのでしょうか。今朝は植え込みのアオキの葉を小ザル達がむしっていましたが、食べているかどうかは判らず、近くにいた親ザルは関心を示しませんでした。 1月中旬に何度か新幹線を越えて南側に侵入した群れを追い返したことを前回の報告に書きましたが、1月31日にも軽井沢高校西の歩道橋をハナコを含む10頭弱が渡り、100mほど南に侵入しているのを見つけ、犬の声をまねた吠え声で追い返しました。翌朝は少し東へ移動し、警察署前の歩道橋を渡り、子連れを含む群れの半数ほどが線路南側の日大寮に侵入していました。数が多く、範囲も広がっていたため、南側に回り込んで爆竹で牽制し、ロケット花火を撃ち込み、歩道橋に向けて追い上げ、線路北へ押し戻しました。追われて帰る際、怖いのか腹立たしいのか、歩道橋に大量の糞をしていきます。まさにクソッタレです。2月12日には軽高西の歩道橋を渡った10頭弱を声だけで追い返しましたが、前日の位置から警戒して早めに行き、頭数が少ないうちなら追い返すのは簡単です。 ![]() < 2/1 歩道橋を帰る群れ > 2月15日早朝、旧軽井沢パウロ教会の北側に来ていた群れを北へ追い、一本松の北西へ群れを追い上げたところで、監視隊の当番が早めに出てきて、二人でさらに北西へ群れを追い上げました。広がろうとする群れをジグザグに追いながら、三笠パークの南端近くまで移動させる事に成功。1時間半あまりかけて1キロ以上の移動距離でした。去年の冬も、別荘のベランダに泊まることがよくありましたが、今年はリゾートマンションのベランダを時々利用しています。市街地からの持続的追い払いが必用と思われます。 役場の方々は「追い払ってもタライの中で水をかき回すようなものだ」と言います。「一ヶ所から追い払えば隣に移動するだけだから被害は減らない」と言います。これまで一年間、様々な場所で「サル追い」をやってみて感じることですが、むしろ「タライの水は思い切りかき回した方がよい」「自分の周囲からはともかくサルを追い出す」のが良いと思います。めちゃくちゃな追い方をすると群れが分裂するかも知れないという危惧が聞かれますが、大雑把に言って次の2点を徹底すれば、あとはともかく追い回していいと思われます。第1点は湯川・国道146から西へは行かせない、群れが西側に入ったら全力で東へ追う。第2点、湯川より東では出来るだけ北へ追い、国道18号・鉄道線路より南へは行かせない。この2点を徹底すれば、後はサルの顔を見たら絶えず追い払う、住民も監視隊もボランティアも通りがかりの人もサルを見たら追う、イヤなものはイヤとはっきり行動で示すこと。西側と南側への移動を阻止していれば群れの分裂はなさそうだし、たとえ分裂して一部が北や東へ移動してくれれば、それも良しでしょう。 絶えず追い回し、ゆっくりエサを食べられない状況、いつも身の危険を感じる状況を作り出すことと同時に、エサ場としての魅力を減少させるために、人家の戸締まり、農地や家庭菜園の電気柵やネット、収穫物の管理などの対策も有効でしょう。住民による追い払いと戸締まりのために、現在も一部行われていますが、監視隊の車両はいつも広報用スピーカーをつけること。スピーカーで呼びかけて追い払いに出てくれる人を監視隊がリードすること。追い払いに対する別荘民の理解を深め、苦情に対しては役場がきちんと対応すること。千ヶ滝西区の入り口付近に群れが来ると、時々赤毛の大型犬がサルを追い回しているのを見かけます。群れが追われて移動することもありますし、樹上高く逃げる事もあります。いずれにしても、犬に追われればそこでエサを食べる余裕はないわけで、サルにとってそのエリアの魅力が減少することは間違いなさそうです。そこにいてはいけないというメッセージをサルにきちんと伝えることが必要です。 被害が起きるような条件・加害を誘うような環境を放置したまま、加害個体を捕獲しても、また次々あらたな加害個体が現れるでしょう。犯罪が起きる社会的条件や環境を変えずに、犯罪者を特殊な異常者と規定して摘発と厳罰に頼っても犯罪は減らない。死刑制度は人間社会においても犯罪の抑止効果という点ではあまり有効ではないようです。サルの場合は特に、銃で撃たれたり車にはねられた現場にまたすぐやってくるところを見ると、駆除による見せしめ効果はなさそうです。むしろ、「加害個体」の可能性があるサルを捕獲した場合、「お仕置き放獣」と呼ばれている「教育刑」いろいろを試してみる方が、群れ全体の学習効果があるかも知れません(やってみなければわかりませんが)。その上でなお、市街地や農地に執着するもの、矯正不可能なもの、コントロールしにくいハナレザルで被害をおよぼすものなどを加害個体として駆除の対象とするべきでしょう。 たびたび群れを追い払っていると、車を止めた時点で警戒している彼らの視線を感じます。パチンコを持って車から出ると一斉に逃げますが、カメラを持って出ても平然としています。赤ん坊や小ザルの中にはカメラでも怯えるものもいますが、母ザルに抱かれながらチラチラとこちらを見ています。市街地や農地の周辺にいる群れを、見て見ないふりをしたり放置することは彼らに間違ったメッセージを送っている可能性があります。たえず、このエリアにはいてはいけないというこちらの意志を明確に伝える態度をとるべきです。「タライの水をかき混ぜるだけだから追ってもしょうがない」から、「被害や苦情のあるなしにかかわらず絶え間なく追い払う」ことへ対応を変えていくことです。10年以上前だったと思いますが、サル(たぶんニホンザル)に強いストレス(檻の中で水攻め)を与えると、非常に短時間で胃潰瘍が出来るという実験報告を聞いたことがあります。このことは、彼らに強いメッセージを送り続ければ、敏感に反応して行動に反映される可能性を示唆してはいないでしょうか。 日の出が日一日と早くなっています。エサが少ないこの冬は、朝はやくからエサ探しを始めるかと思っていましたが、曇りや雪・雨の日は行動開始がむしろ遅くなっていす。省エネ態勢でしょうか。晴れた朝は早くから動き始め、小ザルが10頭近くがひとかたまりになって遊び回っている横で、妊娠していると思われるメスザルがお腹を太陽に向けて暖まっている光景が見られます。 ![]() <3/3 メスザルの日向ぼっこ> ![]() <3/3 小ザルの集団> ************************************** サル追い日誌 ( )内の位置情報は野生生物監視隊の報告によります 1月19日 朝 千ヶ滝通り塩壺温泉入り口付近 夕 千ヶ滝西区 黒橋バス停の西 1月20日 朝 黒橋バス停から西へ。 夕 (あやめが原バス停付近) 1月21日 朝 あやめが原バス停周辺 夕 せせらぎの里バス停西 1月22日 朝 せせらぎの里 バス停の南を東に移動 夕 (せきれい橋東500m) 1月23日 朝 長倉神社北の石山付近で、群れは草を抜いて緑の部分を食べる 夕 (長倉神社北150m) 1月24日 朝 中央公民館東のナラ林でドングリを食べる 夕 軽井沢警察署北側のモミ林 1月25日 朝 警察署周辺。線路南へ移動する様子はない。 午前 ニコスグラウンド北側の草原 夕 (旧軽児童館西500m) 1月26日 朝 旧軽ロータリー南・西。監視隊1名と西へ追う。町営駐車場裏方向へ。 夕 (一本松周辺) 1月27日 朝 旧軽銀座。神宮寺西からつるや旅館北側へ移動。銀座通りに出た一部を 監視隊1名と追い払い。爆竹・ロケット花火。 夕 駅・旧軽線の中程、NTT東側で信号音最強 1月28日 朝 NTT周辺から追い払い。西へ移動。爆竹・ロケット花火。 夕 東部小北100〜300m。離山線沿いから北へ追い上げ。 1月29日 朝 東部小北300mの斜面。 夕 (軽井沢高校北100m) 1月30日 朝 軽高北。離山線の南側にいたグループを北へ追う。ロケット花火・パチ ンコ。黒く小さい糞多数。 1月31日 朝 ハナコを含む10頭弱のグループが線路南のインドアテニス付近に侵入。 歩道橋を北へ追い、軽高周辺にいた群れに戻す。 2月1日 朝 群れのほぼ半分が警察署・線路南側の日大寮周辺に侵入。一部は子連れ。 爆竹・ロケット花火、ジグザグに追って、歩道橋を北へ渡らせる。 夕 (東部小東500m) 雪 2月2日 朝 国道18号駅前バイパス分岐点北(ホテル・サイプレス)周辺のビル軒下 昼間 北へ移動し、雲場池東のロッテクラブ付近 夕 (東部小北東500m) 2月3日 朝 恵シャレー北。行動開始が遅い。 夕 軽高北東200m。離山線北の林とマンションに。 2月4日 朝 同上。動き始めが遅く、目視数は少ない 夕 (軽高北100m) 2月5日 朝 軽高周辺。国道沿いで南を伺う集団5〜6頭を北へ追う。目視数は少ない。 夕 病院医師住宅付近 2月6日 朝 医師住宅南から病院駐車場を西へ移動。 夕 (中部小バス停北東300m) 2月7日 朝 鳥ヶ坂町営住宅北。ニセアカシアの大木に10数頭群がり実を食べる。 夕 せきれい橋南200m。湯川キャンプ場付近で信号音。昼間付近で住居侵入 2月8日 朝 中軽地区北端の国道146号両側。400mほどの範囲に広がっている群れを グループごとにまとめて東へ追う。3グループは川沿いの枝を伝わって湯 川東岸に渡り、2グループは西岸沿いに南に下る。第一法規寮方向へ南下。 夕 第一法規寮付近で信号音。 2月9日 朝 長倉神社北、宮裏橋北200m。若いサル達が手当たり次第、草や樹皮を食 べる。子連れは見かけない。 夕 長倉神社北東で信号音。 2月10日 朝 宮裏橋北300m。湯川東岸の林。 夕 病院駐車場東の林。追うと一斉に東へ移動。ロケット花火。 2月11日 朝 病院駐車場北東200m。沓掛学荘方向へ追う。 午前 資料館下。国道沿いに出るものを北へ追う。 2月12日 朝 軽高周辺。歩道橋を南に渡った10頭弱を声で追い返す。 午前 軽高北の別荘地でツリバナの樹皮を食べる。 夕 (東部小東南300m) 2月13日 朝 新軽井沢交差点北西、精進場川沿いのコテージ。 夕 (旧軽児童館西300m) 2月14日 朝 旧軽ロータリー南の住宅街から西へ追い払い。精進場川の西へ。 夕 (一本松東200m) 2月15日 朝 パウロ教会裏に達していた群れを北東へ追う。一本松バス停を越えて三 笠通りの西へ移動させたところで、監視隊1名参加しさらに北東へ。 停滞し、広がろうとする群れをジグザグに追いながら、三笠パーク南端 近くまで移動させる。移動距離は1キロあまり。所要時間1時間半。 夕 (東部小北東300m) 2月16日 朝 恵シャレーの北で少数目視。 夕 (軽高北200m) 2月17日 朝 東部小西川の群れを離山線北側へ追う。 午前 前日、妙義町役場から問い合わせのあった妙義・下仁田の群れの発信 器周波数が受信されないか、確認のため和美峠・馬取・上発地へ。電波 は受信されず。監視隊に妙義町からのメールプリントを渡す。 2月18日 朝 軽井沢警察署から離山線の間に散開。 夕 (旧軽ロータリー南) 2月19日 夕 (一本松周辺) 2月20日 朝 一本松バス停北側 夕 (旧軽児童館南) 2月21日 朝 旧軽児童館南西200m 夕 旧軽・神宮寺周辺 2月22日 朝 旧軽銀座通り、神宮寺周辺から東の大塚山にかけて散開 夕 (旧軽児童館周辺) 2月23日 朝 旧軽銀座通り南端から西の静山荘にかけて。動きが少ない。 夕 (東部小西100m) 2月24日 朝 東部小西側の住宅街から離山線の北へ追う。 2月25日 夕 (せきれい橋南200m) 2月26日 夕 (長倉神社北300m) 2月27日 朝 長倉公園。宮裏橋北から湯川河川敷を下り、湯川橋東の住宅地へ。北へ 追い上げ、公園北東の住宅地を通り公民館西へ。 夕 石山の西、三井の森南端道路沿い。 2月28日 朝 三井の森南端道路下のモミ林から動かない。 3月1日 朝 せせらぎの里バス停東。バス停周辺から東へ追う。途中、赤い大型犬(時々 見かける)が現れ、群れを樹上に追う上げる。 夕 千ヶ滝通り、スケートセンター入口信号付近で強い信号音。 3月2日 朝 スケートセンター入口付近から東へ追う。星野温泉入り口を通過する際、 ピッキオによる頭数カウント。 夕 軽井沢病院医師住宅入り口で信号音最強。 3月3日 朝 社会体育館駐車場と西側のマンションとの間。小ザルが群れ遊ぶ。妊娠メ スザルは腹を突きだし、日向ぼっこ。 夕 (東部小北300m) 3月4日 朝 東部小南のニコスグラウンドから離山線間。住宅街から北へ400m追う。 夕 (一本松周辺) ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
by k-saru-net
| 2006-03-04 22:42
| サル追いノート
|
アバウト
![]() 広く豊かな自然がありながら、市街地や農地を荒し回る軽井沢のニホンザル。人間とサルの望ましい関係を、観察と対策の実践の中から模索する人々のネットワークをめざしています。 by k-saru-net カテゴリ
最新の記事
検索
リンク
以前の記事
2021年 01月 2020年 12月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 01月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 フォロー中のブログ
ライフログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||