1 2006年 03月 28日
この冬は群れの移動範囲が狭くなっている事は以前報告しましたが、3月に入ってからさらに群れの動きは少なくなり、離山地区・旧軽井沢地区・新軽井沢地区に限られています。本来の遊動域の4分の1の面積で、市街地の割合が特に高い地域です。なお、このレポートを書いている時、24日ぶりに群れは西へ移動し3/27早朝は中軽地区中央公民館の北西をさらに北西に移動中です。 群れの求心力が弱くなっている? 前回、3月15日に行われた旧軽井沢地区住民による群れの追い払いについて報告しました。その後の群れの動向ですが、何度か分派行動が見られ、群れの求心力が一時的に弱くなった可能性があります。大がかりな追い払いの前後は群れの様子を早朝から注意深く観察し、異常な行動に対してはすばやく対処出来る備えが必要です。 3/18日夜は警察署周辺に泊まっていた群れが、19日朝は特に変わった様子もなく500mほど西へ移動しました。19日の夕方16:50頃、国道18号を東へ向かうと、中学校東でマロンの信号音がはいり、離山線へ左折し離山集落を過ぎ、高校の手前のマンション付近で群れを見つけました。マロンの信号音は消え、ハナコの音が入り、離山線を南に渡ってマンションの芝生でエサ拾いをする20頭ほど、公民館分館周辺や離山線北側のホテル内などに散開している様子が見られました。赤ん坊連れや若いサルもいて、しばらく北側へ追っていましたが、動く様子がなく、そのまま高校の西北の林に泊まりそうなので、17:15頃18号を西に戻りました。 ![]() 中学校付近でやはりマロンの信号音が入るので、中学の裏にまわると、10頭ぐらいのグループがかなり速い速度で北西に進んでいて、甲山地区に入りそのまま中央公民館裏のペンションまで一気に達しました。 群れからはぐれたという感じではなく、強い意志を感じる進み方でした。ペンションと城南信用金庫の間の林でしばらくエサ探しをしたあと、北側の林に入ったようでした。カウント出来た最大頭数はマロンを含む9頭、中型から小型のアダルトで、小ザルや赤ん坊は見かけませんでした。 後で監視隊の当番に聞いたところでは、昼間からマロンは図書館方向へ移動していたそうです。泊まった位置と群れ本隊の距離は約1.5キロ。微妙な距離ですが、両グループの翌日の行動が要注意ですので、翌朝は早めに現地に行きました。昨夜、中央公民館裏に泊まったマロンを含む約9頭を6:00からパチンコ、ロケット花火、爆竹などで東へ追い、沓掛学荘、中学校裏、雨宮池上へと追い続け、7:00図書館上を通過し、7:40離山地区の山側にでたもよう。本隊と合流すると思われましたが、途中、ペンションのエサ台に執着し何度か逆戻りがありました。離山地区に泊まった群れ本隊の一部が、7:25頃軽井沢高校西の歩道橋で線路をを渡りましたが、7〜8頭渡ったところで気づき、追い返しました。 3月21日、朝6:40に警察署付近に到着すると、歩道橋を渡る10頭ほどが見え、東の陸橋を越えて南側に回り込む。南側には既に相当数が散らばっている模様でしたが、まだ続々歩道橋を渡ってくるので、とりあえず日大寮側の階段付近と歩道橋上の十数頭を警察署横へ追い返す。その後、群れの散らばり具合を見て回ると、西へ500m以上進んでいるのが確認されたが、歩道橋からあまり離れると再び渡って来そうなので、200m以内に群れていた20頭ほどの赤ん坊連れのグループを歩道橋側に追い、さらに歩道橋を渡らせて北へ追い戻す。その後は遠くに散っている5〜6頭ずつの4グループを順次追い戻し、警察署側のすべて戻したのが7:45。ちょうど1時間かかりました。 23日午後、群れのほとんどが旧軽公民館北東の矢ヶ崎川付近にいるとき、オスザルと思われる何頭かがロータリー西にいました。 15日の集団追い払い以降、群が不連続に分かれたケースを比較してみます。16日については分派行動と言うより人為的分断です。 3/16 *旧ゴルフ三叉路(オス・メス・子供・赤ん坊・グリーン) *ロータリー東(オス・メス・子供・マロン・ハナコ) 距離約1.2km。 旧ゴルフグループが呼び声を発しながら移動。 方向をコントロール後、ロータリー西で合流。 3/18 *ロータリー南に半分 *NTT付近に半分 距離約500m 3/19、20 *離山地区(大多数・ハナコ・グリーン) *中央公民館北(オス・メス・マロン 9頭以上) 距離約1.5km 20日早朝マロングループを東へ追い、離山地区北で合流。 〜19、20日ともに移動中の鳴き声はない。〜 3/21 *南が丘(オス・メス・子供・赤ん坊・ハナコ・グリーン・約50頭) *警察署東(オス・メス・子供・マロン) 最大距離約800m。 線路南へ侵入したグループは南西方向に進むが、マロングループは移動 の気配なし。 3/23 *旧軽公民館北(群れのほとんど・マロン・ハナコ・グリーン) *ロータリー西(オス?3頭以上) 最大距離約700m このところ群れの求心力が弱いように感じます。それが15日の集団追い払いと関係があるのか、あるいは交尾期が終わって季節的なものなのかは判りませんが、大がかりな追い上げなどの後、1週間ぐらいは分裂や思わぬ方向への移動に注意し、阻止出来る態勢が必要と思われます。 今後の追い払い態勢について 夕方、泊まり場に向かう頃の群れの動きには強い意志が感じられ、なかなか思うようにコントロール出来ません。線路南のように、いて欲しくないエリアに群れが入ったままで夕方を迎えると、追い返すのは困難になりそうです。国道・しなの鉄道・新幹線が平行していて、その上を歩道橋で渡るという状況は彼らにとって明らかに一定の精神的障壁であるため、線路を越えて深く南に侵入し、そこで泊まることになれば、戻らずに南側への定着もありえます。21日も、群れの半分は南側に入っていましたが、マロンを含む子連れの数十頭のグループは警察東側のモミ林にとどまって、南へ移動する気配を見せませんでした。場合によっては、線路の南北に群れが分裂し、遊動域が拡大する事も考えられます。 群れがいてはいけないエリアに入り込むのは早朝が多く、また早朝は群れをコントロールし一定方向に移動させやすいので、早朝の追い払い態勢が必要です。昼間が短い冬の3ヶ月をのぞいて、野生動物監視隊の当番出動を「日の出から8時間」と「日没8時間前から日没まで」の、早番・遅番の2部制にすること。これからの季節は夕方5時以降に早足で1キロほど移動することもあります。遅番の当番は日没時に泊まり場を確認し、翌朝の早番に伝え、必要があれば周辺住民やボランティアに連絡し、翌朝の追い払い協力を仰ぐ。先日の旧軽地区住民の自主的追い払いの様な取り組みを有効にいかし指揮することが監視隊に求められるでしょう。 各地でサル対策に取り組んでいる官民様々な運動は、インターネットを利用した情報交換や意見交換を活発に始めています。軽井沢では監視隊が毎日群れにはりついて観察と追い払いを行っていますが、そこで得られた情報や経験が充分地域住民や関係者にさえ伝わっていないのが現状です。早急に監視隊自身でインターネットによる情報発信と、全国各地の取り組みとの交流をはかるべきです。毎日その日の群れの行動を簡単にまとめて、監視隊員相互・行政・住民組織その他の関係者の携帯にメール通信を入れ、日常的追い払い態勢のリーダーになることを監視隊に提案したいと思います。現在、電話やファックスで連絡しているようですが、大勢の人にすばやく情報を送り状況を連続的に把握する事と情報や意見交換の双方向性のためには、インターネットの利用が不可欠です。 サル問題に限らずイノシシやシカなど、これから野生鳥獣問題は町内でもますます大きくなっていくでしょう。対策側の組織力・機動力・技術・情報能力など、対策の実践をとおして高めていかなければならないところに来ています。 ***************************************** 3月に入ってからの、「サル追い日誌」を掲載します。 ( )内の位置情報は野生動物監視隊の報告によります。 3/1 朝 せせらぎの里バス停東。東へ追っていると、赤い大型犬がでてい来て群れを 樹上に追い上げる。 夕 国道146号、スケートセンター入口三叉路付近で信号音。 3/2 朝 三叉路から東へ追う。星野温泉入り口を東へ移動。ピッキオによるカウン ト。 夕 軽井沢病院医師住宅付近で信号音。 3/3 朝 社会体育館駐車場。赤ん坊の保育園状態。メスの日向ぼっこ。 夕 (東部小北300m) 3/4 朝 東部小南・西から離山線の北200へ追い払い。 夕 (一本松周辺) 3/5 朝 旧軽銀座通り南半分・ロータリーから町営駐車場にかけて散開。 夕 (一本松周辺) 3/6 朝 旧軽 神宮寺周辺から西へ400mほど追う。声とパチンコ。 夕 (一本松南200m) 3/7 朝 旧軽ロータリーから静山荘にかけて 夕 (一本松周辺) 18号碓氷バイパス横川から1/3付近でレベッカの信号音。 3/8 朝 一本松周辺と三笠通り両側 ゴルフ橋間。ハナコが一昨年の子供と毛繕い 夕 旧軽 諏訪神社周辺。テニスコートから矢ヶ崎川の間。監視隊とU群につ いての情報交換。 3/9 朝 旧軽 諏訪神社から大塚山南。ドングリを食べる。旧18号沿い坂本までは サルは見つからず、信号音もなし。碓氷バイパスで、横川から1/3、入山峠 から2/3の地点(C12)付近でレベッカの信号音。 夕 (東部小北200m) 3/10 朝 六本辻南東。東雲交差点から神宮寺霊園にかけて。 夕 新軽井沢 サイプレスホテル周辺。新軽井沢交差点と新軽井沢西交差点の間 の国道北側。 3/11 朝 東部小南のニコスグラウンド内、草原で採食。 夕 (東部小北100m) 3/12 朝 東部小西側の住宅街から、監視隊1名と離山線北のアローグラウンドへ400 m追う。 夕 (一本松東200m) 3/13 朝 旧軽町営駐車場付近に5〜6頭、ハナコの信号音。他は不明。 夕 (一本松周辺) 3/14 朝 一本松東側の別荘地斜面上。 夕 旧軽ロータリー西400m。西へ追うが、ロータリー方向へ行きたがる。東へ 100mほどで泊まる。 3/15 朝 旧軽ロータリー西400m。昨夕の場所から西へ追い、鹿島の森ホテルへ。 午後 旧軽地区住民による追い払い 夕 マロン・ハナコを含む半分は旧軽公民館へ、残り半分は鹿島の森ホテル西。 3/16 朝 鹿島の森ホテル西のグループをロータリー方向へ誘導、合流させる。 午後 離山線のロータリー・六本辻間。 夕 (東部小東200m)翌朝の様子から、もう少し東で泊まったもよう。 3/17 朝 東雲交差点南西400m。南の住宅街へ出た10頭ほどを爆竹・ロケット花火 で追う。3信号音。 夕 (旧軽児童館南200m) 3/18 朝 ロータリー南200付近に一群、西へ追う。新軽方向NTT付近に一群、西 離山線まで追う。 夕 (軽高東200m) 3/19 朝 警察署と離山線の間。警察東の陸橋北詰のモミ林から追う。 夕 ほとんどが離山のマンション周辺。マロンを含む9〜頭が中学校裏から中央 公民館裏へ。 3/20 朝 中央公民館裏のマロングループを東へ誘導。図書館上から離山北側へ。高 校付近の本隊一部7〜8頭が歩道橋を南へ渡るのを追い返す。 夕 (軽高東200m) 3/21 朝 群れの半分以上が線路南の日大寮から西へ600mほど侵入。6派に分けて 北側へ追い戻す。 夕 (東部小東400m、) 3/22 朝 前夜の泊まりは東雲交差点西側。西側の住宅地から東へ追う。 夕 (旧軽児童館周辺) 3/23 朝 旧軽郵便局周辺から移動せず。 午後 ロータリー北に数頭。残りは旧軽公民館東の矢ヶ崎川周辺。群馬のドッグス クールが訓練中の犬3頭。 夕 (旧軽児童館東300m) 3/24 朝 旧軽銀座通りの北半分。監視隊1名とテニスコート側から神宮寺の西側へ 追い払う。 3/25 朝 旧軽ロータリー南300mから西へ、精進場川西へ追い払う。 夕 警察署周辺から軽高西にかけて 3/26 朝 警察署東の陸橋・コンビニから追い払い。警察署裏から動かない。イチイ の枝先を食べている様子。 夕 軽井沢病院北東。城南信用金庫寮内。3信号音共に受信。 3/27 朝 中央公民館裏から北西に移動。長倉講演北側から追い払い。公民館と石山 の間をさらに北西へ移動中。 午後 中軽井沢地区北端の千ヶ滝通り(146号)西側から鳥ヶ坂にかけて 夕 (せきれい橋南300m) ***************************************** ▲
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| 2006-03-28 08:16
| サル追いノート
2006年 03月 22日
3月16日午後、約20名の旧軽井沢住民によるサルの群れに対する追い払いが自主的に行われました。現場でサルの位置情報を伝える等の形で協力した立場から、当日の様子と前日・翌日の群れの動きを報告をします。 旧軽井沢の方々が追い払いを実行するに到る背景には、前回の報告で書きましたように、この冬の間、軽井沢のニホンザル(K群)の遊動域が以前に比べると半分以下に狭まり、とりわけ旧軽井沢地区を遊動することが多くなっていたことがあると思われます。商業地域である旧軽地区にとって、春の観光シーズンを控えて、早い時期に対策が必要でした。 ![]() [ 経過報告 ] 地図上の青い線は3/15、紫の線は3/16の群れの移動ルート。 3月14日夕方、A点から西300mあたりにいた群れが東、旧軽井沢ロータリー方向に移動していたため、出来れば旧軽中心部への侵入を止めたかったので、監視隊1名とともに二人で、A点西の道路で阻止しようとしました。泊まり場に向かう時間帯では、移動方向の転換はかなり困難なので、結果的には阻止線を突破されましたが、旧軽ロータリー付近には達することなく、A点周囲に泊まったようです。 15日7:00、住民1名と2人で、A点から群れを西へ追っていると、現場にきた旧軽の監視隊員から、午後1時から旧軽住民による追い払いが行われるとの情報がありました。計画では旧軽から東南へ三度山方向に追いたいということでした。前もって知らされていれば反対方向に追ったのですが、その時点ではすでに群れはB点(鹿島の森ホテル)に移動していました。 13:00,群れはB点から旧ゴルフ内に入り、西へ散開しながら少しずつ北上していて、当番の監視隊等とゴルフ場北側の別荘地に達するのを待っていましたが、群れはC点付近でゴルフ場職員に追われているようでした。その後、C点の東に出てくるかとも思い東へ回り込みましたが、1時過ぎに犬1頭をつれてゴルフ場内に入った旧軽の方々に追われて、群れはB点に逆戻りしていたようです。 B点でゴルフ場のネットにサルが1頭引っかかるというハプニングがあり、大勢の住民にモデルガンで追われた群れはG点方向へ逃げ、さらに追われてD点(一本松)で停滞します。3時頃、D点にはハナコ・マロンの両信号音が入りましたが、見る限りサルの頭数は少なく、西に反転するサルも見られ、追い払い部隊はG点に戻り、さらにB点に戻ると南西の斜面上にかなり散開しているようでした。F点南側から回り込んで追い払いをかけたところ、一部が東に下り川を渡ってF点三叉路の北東200mの別荘地に約20頭停滞しました。 5時前に住民による追い払いは終了しましたが、翌朝の動きから考えると群れの半分ほどはF点周辺に泊まったようです。D点方向に移動したハナコ・マロンを含むグループは3時以降、さらに東へ進み、旧軽銀座通り北端から大塚山南・旧軽テニスコートを経て、5時過ぎE点に達し泊まったようです。 翌16日7:00、E点に泊まったグループはいくらか西に移動し、先頭は旧軽銀座通り南端で商店の屋根で朝日を浴びながら静かに停滞していました。爆竹・ロケット花火で追い払いをかけたのですが、ほとんど動かず、小ザルだけが動き回っていました。 8:00、B点にまわると、三叉路西の道を南側から横断し、続々旧ゴルフ場内をかすめて北東へ向かうグループを見つけ、後を追いました。子連れの母ザルが多く、大きな声で鳴き交わしながらかなりの速度で移動していきます。(紫の線)その様子から、群れの残り半分を探していると思われたので、北東の一本松方向へ向かうグループの先に回り込み、G点で北側から爆竹とパチンコで押し、移動方向を旧軽ロータリーに向けました。その後はグループの後ろからロータリー西200まで押して、ロータリーにまわってみましたら、東にいたグループが気づいたらしく西へ移動を始め、ロータリー西の町営駐車場付近で2つのグループは合流したようでした。合流後は南へ移動。昼頃にはロータリー南西700mあたりの離山線両側に散開していました。 結果的には旧軽地区からの追い出しは出来なかったのですが、地域住民が自主的・組織的に追い払いを実施した意味は充分あったと思われます。押入にしまい込んでいたモデルガンを取りだし、群れに向かっていったこと。まずは自分たちで自分たちの地域から追い払うのが対策の第一歩であることはまちがいないでしょう。旧軽地区は三方を山に囲まれ、南(新軽井沢方向)と南西(離山地区)への移動をブロックしさえすれば、あとはともかく繁華街から追い出していけばいいという環境ですので、根気よくガンガン追い立てればいいでしょう。 夕方、泊まり場へ向かう時間帯になると群れの移動意志が強固に固まるようですので、繁華街から一定方向へ移動させたい時は早めに、出来れば朝一番に追い上げを始めるのが効果的と思われます。これからの季節、活動開始時刻が早まりますので、追い払い部隊も日の出頃から1〜2時間、出勤前・商店の開店前に追い払うのがよさそうです。早朝なら少人数でも効果的な追い払いが出来ることが多いので、たまに大勢でやるより、前日の泊まり場が地区内にあるときは毎朝追い払いをかけるとよいでしょう。 旧軽地区は独自に広報車を出して、地域住民に注意を呼びかけていますが、他の地区で追い払いを行う時は何らかの広報手段が必要でしょう。また、例えば離山地区であれば線路南への移動はブロックしなければかえって被害が広がるなど、地区によって作戦を立てる必要があります。事前に監視隊などとの打ち合わせと、追い払いメンバー内の意志統一が大切でしょう。 今回の試みが今後、地域住民による日常的な追い払いにつながっていく事を期待しています。 ▲
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| 2006-03-22 23:21
| メッセージ
2006年 03月 04日
前回の報告から一月半が経ってしまいました。昨年の12月から一月中旬までの寒さに較べると、その後はむしろ暖冬に転じた印象です。今後の気象は判りませんが、ここまでは季節の移り変わりが1ヶ月早く巡った感じです。以前の報告で書きましたが、昨年の秋はクリやドングリなど冬場のカロリー源になる堅果類が全くの不作で、昨春生まれた赤ん坊サルの多くが冬越し出来ない可能性も考えたのですが、今のところ脱落は見られていません。少ないエサを求めて広範囲に移動するのではないかと考えていましたが、昨冬の誘導域の内、離山の北・西側(三笠パーク・三井の森別荘地・鶴溜地区)が利用されておらず、千ヶ滝西区の利用も少なく、明らかに誘導域はせばまって、動きが少なくなっています。草の種やモミの種?など、一定量食べるのに時間がかかるエサに依存しているため、移動する余裕がないのかもしれません。いずれにしても、冬の始めに考えた予想は今のところはずれていて、思いこみにとらわれない観察の重要性を痛感させられます。 豊作だったイチイの実が終わった後は、これと言ってきまったエサはなく、草の実や根と緑の部分、地面に落ちている実や種、木の皮など手当たり次第食べています。ドングリがたくさん落ちている木が1本だけあったところでは10頭ずつぐらいの3グループが順番に食べていました。去年の冬も時々単独で食べる事がありましたが、大勢で一斉に食べるのはドングリのあくが抜ける春先になってからでした。実が異常なほどたくさんぶら下がっているニセアカシア?の大木が1本だけ鳥ヶ坂下にあり、雪のあと十数頭が群がって食べていましたが、実を食べ尽くす事はなく1時間ほどで移動していきました。木の皮は去年もそうでしたが、歯形が残るほど直接囓りついて食べるのですが、群馬県側の群れのように皮を剥ぐ事はあまりないようです。軽井沢高校の北の別荘地では、ツリバナの樹皮を囓っていました。 ![]() <1/17草を食べる> ![]() <2/7ニセアカシアの実に群がる> ![]() <2/9サクラの枝を囓る> 長倉神社境内で地面にモミの実が翼片に分解してびっしり落ちているところでは細かいモミの種を次々拾って食べているように見えました。昨年の今頃はクリやクルミの他、樹皮や冬芽、ササの葉などをもっと食べていましたが、今年は雪がほとんどないため地面に落ちている実や種を食べているようです。小さくても実や種の方がエサとしての価値が高いということなのでしょうか。今朝は植え込みのアオキの葉を小ザル達がむしっていましたが、食べているかどうかは判らず、近くにいた親ザルは関心を示しませんでした。 1月中旬に何度か新幹線を越えて南側に侵入した群れを追い返したことを前回の報告に書きましたが、1月31日にも軽井沢高校西の歩道橋をハナコを含む10頭弱が渡り、100mほど南に侵入しているのを見つけ、犬の声をまねた吠え声で追い返しました。翌朝は少し東へ移動し、警察署前の歩道橋を渡り、子連れを含む群れの半数ほどが線路南側の日大寮に侵入していました。数が多く、範囲も広がっていたため、南側に回り込んで爆竹で牽制し、ロケット花火を撃ち込み、歩道橋に向けて追い上げ、線路北へ押し戻しました。追われて帰る際、怖いのか腹立たしいのか、歩道橋に大量の糞をしていきます。まさにクソッタレです。2月12日には軽高西の歩道橋を渡った10頭弱を声だけで追い返しましたが、前日の位置から警戒して早めに行き、頭数が少ないうちなら追い返すのは簡単です。 ![]() < 2/1 歩道橋を帰る群れ > 2月15日早朝、旧軽井沢パウロ教会の北側に来ていた群れを北へ追い、一本松の北西へ群れを追い上げたところで、監視隊の当番が早めに出てきて、二人でさらに北西へ群れを追い上げました。広がろうとする群れをジグザグに追いながら、三笠パークの南端近くまで移動させる事に成功。1時間半あまりかけて1キロ以上の移動距離でした。去年の冬も、別荘のベランダに泊まることがよくありましたが、今年はリゾートマンションのベランダを時々利用しています。市街地からの持続的追い払いが必用と思われます。 役場の方々は「追い払ってもタライの中で水をかき回すようなものだ」と言います。「一ヶ所から追い払えば隣に移動するだけだから被害は減らない」と言います。これまで一年間、様々な場所で「サル追い」をやってみて感じることですが、むしろ「タライの水は思い切りかき回した方がよい」「自分の周囲からはともかくサルを追い出す」のが良いと思います。めちゃくちゃな追い方をすると群れが分裂するかも知れないという危惧が聞かれますが、大雑把に言って次の2点を徹底すれば、あとはともかく追い回していいと思われます。第1点は湯川・国道146から西へは行かせない、群れが西側に入ったら全力で東へ追う。第2点、湯川より東では出来るだけ北へ追い、国道18号・鉄道線路より南へは行かせない。この2点を徹底すれば、後はサルの顔を見たら絶えず追い払う、住民も監視隊もボランティアも通りがかりの人もサルを見たら追う、イヤなものはイヤとはっきり行動で示すこと。西側と南側への移動を阻止していれば群れの分裂はなさそうだし、たとえ分裂して一部が北や東へ移動してくれれば、それも良しでしょう。 絶えず追い回し、ゆっくりエサを食べられない状況、いつも身の危険を感じる状況を作り出すことと同時に、エサ場としての魅力を減少させるために、人家の戸締まり、農地や家庭菜園の電気柵やネット、収穫物の管理などの対策も有効でしょう。住民による追い払いと戸締まりのために、現在も一部行われていますが、監視隊の車両はいつも広報用スピーカーをつけること。スピーカーで呼びかけて追い払いに出てくれる人を監視隊がリードすること。追い払いに対する別荘民の理解を深め、苦情に対しては役場がきちんと対応すること。千ヶ滝西区の入り口付近に群れが来ると、時々赤毛の大型犬がサルを追い回しているのを見かけます。群れが追われて移動することもありますし、樹上高く逃げる事もあります。いずれにしても、犬に追われればそこでエサを食べる余裕はないわけで、サルにとってそのエリアの魅力が減少することは間違いなさそうです。そこにいてはいけないというメッセージをサルにきちんと伝えることが必要です。 被害が起きるような条件・加害を誘うような環境を放置したまま、加害個体を捕獲しても、また次々あらたな加害個体が現れるでしょう。犯罪が起きる社会的条件や環境を変えずに、犯罪者を特殊な異常者と規定して摘発と厳罰に頼っても犯罪は減らない。死刑制度は人間社会においても犯罪の抑止効果という点ではあまり有効ではないようです。サルの場合は特に、銃で撃たれたり車にはねられた現場にまたすぐやってくるところを見ると、駆除による見せしめ効果はなさそうです。むしろ、「加害個体」の可能性があるサルを捕獲した場合、「お仕置き放獣」と呼ばれている「教育刑」いろいろを試してみる方が、群れ全体の学習効果があるかも知れません(やってみなければわかりませんが)。その上でなお、市街地や農地に執着するもの、矯正不可能なもの、コントロールしにくいハナレザルで被害をおよぼすものなどを加害個体として駆除の対象とするべきでしょう。 たびたび群れを追い払っていると、車を止めた時点で警戒している彼らの視線を感じます。パチンコを持って車から出ると一斉に逃げますが、カメラを持って出ても平然としています。赤ん坊や小ザルの中にはカメラでも怯えるものもいますが、母ザルに抱かれながらチラチラとこちらを見ています。市街地や農地の周辺にいる群れを、見て見ないふりをしたり放置することは彼らに間違ったメッセージを送っている可能性があります。たえず、このエリアにはいてはいけないというこちらの意志を明確に伝える態度をとるべきです。「タライの水をかき混ぜるだけだから追ってもしょうがない」から、「被害や苦情のあるなしにかかわらず絶え間なく追い払う」ことへ対応を変えていくことです。10年以上前だったと思いますが、サル(たぶんニホンザル)に強いストレス(檻の中で水攻め)を与えると、非常に短時間で胃潰瘍が出来るという実験報告を聞いたことがあります。このことは、彼らに強いメッセージを送り続ければ、敏感に反応して行動に反映される可能性を示唆してはいないでしょうか。 日の出が日一日と早くなっています。エサが少ないこの冬は、朝はやくからエサ探しを始めるかと思っていましたが、曇りや雪・雨の日は行動開始がむしろ遅くなっていす。省エネ態勢でしょうか。晴れた朝は早くから動き始め、小ザルが10頭近くがひとかたまりになって遊び回っている横で、妊娠していると思われるメスザルがお腹を太陽に向けて暖まっている光景が見られます。 ![]() <3/3 メスザルの日向ぼっこ> ![]() <3/3 小ザルの集団> ************************************** サル追い日誌 ( )内の位置情報は野生生物監視隊の報告によります 1月19日 朝 千ヶ滝通り塩壺温泉入り口付近 夕 千ヶ滝西区 黒橋バス停の西 1月20日 朝 黒橋バス停から西へ。 夕 (あやめが原バス停付近) 1月21日 朝 あやめが原バス停周辺 夕 せせらぎの里バス停西 1月22日 朝 せせらぎの里 バス停の南を東に移動 夕 (せきれい橋東500m) 1月23日 朝 長倉神社北の石山付近で、群れは草を抜いて緑の部分を食べる 夕 (長倉神社北150m) 1月24日 朝 中央公民館東のナラ林でドングリを食べる 夕 軽井沢警察署北側のモミ林 1月25日 朝 警察署周辺。線路南へ移動する様子はない。 午前 ニコスグラウンド北側の草原 夕 (旧軽児童館西500m) 1月26日 朝 旧軽ロータリー南・西。監視隊1名と西へ追う。町営駐車場裏方向へ。 夕 (一本松周辺) 1月27日 朝 旧軽銀座。神宮寺西からつるや旅館北側へ移動。銀座通りに出た一部を 監視隊1名と追い払い。爆竹・ロケット花火。 夕 駅・旧軽線の中程、NTT東側で信号音最強 1月28日 朝 NTT周辺から追い払い。西へ移動。爆竹・ロケット花火。 夕 東部小北100〜300m。離山線沿いから北へ追い上げ。 1月29日 朝 東部小北300mの斜面。 夕 (軽井沢高校北100m) 1月30日 朝 軽高北。離山線の南側にいたグループを北へ追う。ロケット花火・パチ ンコ。黒く小さい糞多数。 1月31日 朝 ハナコを含む10頭弱のグループが線路南のインドアテニス付近に侵入。 歩道橋を北へ追い、軽高周辺にいた群れに戻す。 2月1日 朝 群れのほぼ半分が警察署・線路南側の日大寮周辺に侵入。一部は子連れ。 爆竹・ロケット花火、ジグザグに追って、歩道橋を北へ渡らせる。 夕 (東部小東500m) 雪 2月2日 朝 国道18号駅前バイパス分岐点北(ホテル・サイプレス)周辺のビル軒下 昼間 北へ移動し、雲場池東のロッテクラブ付近 夕 (東部小北東500m) 2月3日 朝 恵シャレー北。行動開始が遅い。 夕 軽高北東200m。離山線北の林とマンションに。 2月4日 朝 同上。動き始めが遅く、目視数は少ない 夕 (軽高北100m) 2月5日 朝 軽高周辺。国道沿いで南を伺う集団5〜6頭を北へ追う。目視数は少ない。 夕 病院医師住宅付近 2月6日 朝 医師住宅南から病院駐車場を西へ移動。 夕 (中部小バス停北東300m) 2月7日 朝 鳥ヶ坂町営住宅北。ニセアカシアの大木に10数頭群がり実を食べる。 夕 せきれい橋南200m。湯川キャンプ場付近で信号音。昼間付近で住居侵入 2月8日 朝 中軽地区北端の国道146号両側。400mほどの範囲に広がっている群れを グループごとにまとめて東へ追う。3グループは川沿いの枝を伝わって湯 川東岸に渡り、2グループは西岸沿いに南に下る。第一法規寮方向へ南下。 夕 第一法規寮付近で信号音。 2月9日 朝 長倉神社北、宮裏橋北200m。若いサル達が手当たり次第、草や樹皮を食 べる。子連れは見かけない。 夕 長倉神社北東で信号音。 2月10日 朝 宮裏橋北300m。湯川東岸の林。 夕 病院駐車場東の林。追うと一斉に東へ移動。ロケット花火。 2月11日 朝 病院駐車場北東200m。沓掛学荘方向へ追う。 午前 資料館下。国道沿いに出るものを北へ追う。 2月12日 朝 軽高周辺。歩道橋を南に渡った10頭弱を声で追い返す。 午前 軽高北の別荘地でツリバナの樹皮を食べる。 夕 (東部小東南300m) 2月13日 朝 新軽井沢交差点北西、精進場川沿いのコテージ。 夕 (旧軽児童館西300m) 2月14日 朝 旧軽ロータリー南の住宅街から西へ追い払い。精進場川の西へ。 夕 (一本松東200m) 2月15日 朝 パウロ教会裏に達していた群れを北東へ追う。一本松バス停を越えて三 笠通りの西へ移動させたところで、監視隊1名参加しさらに北東へ。 停滞し、広がろうとする群れをジグザグに追いながら、三笠パーク南端 近くまで移動させる。移動距離は1キロあまり。所要時間1時間半。 夕 (東部小北東300m) 2月16日 朝 恵シャレーの北で少数目視。 夕 (軽高北200m) 2月17日 朝 東部小西川の群れを離山線北側へ追う。 午前 前日、妙義町役場から問い合わせのあった妙義・下仁田の群れの発信 器周波数が受信されないか、確認のため和美峠・馬取・上発地へ。電波 は受信されず。監視隊に妙義町からのメールプリントを渡す。 2月18日 朝 軽井沢警察署から離山線の間に散開。 夕 (旧軽ロータリー南) 2月19日 夕 (一本松周辺) 2月20日 朝 一本松バス停北側 夕 (旧軽児童館南) 2月21日 朝 旧軽児童館南西200m 夕 旧軽・神宮寺周辺 2月22日 朝 旧軽銀座通り、神宮寺周辺から東の大塚山にかけて散開 夕 (旧軽児童館周辺) 2月23日 朝 旧軽銀座通り南端から西の静山荘にかけて。動きが少ない。 夕 (東部小西100m) 2月24日 朝 東部小西側の住宅街から離山線の北へ追う。 2月25日 夕 (せきれい橋南200m) 2月26日 夕 (長倉神社北300m) 2月27日 朝 長倉公園。宮裏橋北から湯川河川敷を下り、湯川橋東の住宅地へ。北へ 追い上げ、公園北東の住宅地を通り公民館西へ。 夕 石山の西、三井の森南端道路沿い。 2月28日 朝 三井の森南端道路下のモミ林から動かない。 3月1日 朝 せせらぎの里バス停東。バス停周辺から東へ追う。途中、赤い大型犬(時々 見かける)が現れ、群れを樹上に追う上げる。 夕 千ヶ滝通り、スケートセンター入口信号付近で強い信号音。 3月2日 朝 スケートセンター入口付近から東へ追う。星野温泉入り口を通過する際、 ピッキオによる頭数カウント。 夕 軽井沢病院医師住宅入り口で信号音最強。 3月3日 朝 社会体育館駐車場と西側のマンションとの間。小ザルが群れ遊ぶ。妊娠メ スザルは腹を突きだし、日向ぼっこ。 夕 (東部小北300m) 3月4日 朝 東部小南のニコスグラウンドから離山線間。住宅街から北へ400m追う。 夕 (一本松周辺) :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ▲
by k-saru-net
| 2006-03-04 22:42
| サル追いノート
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![]() 広く豊かな自然がありながら、市街地や農地を荒し回る軽井沢のニホンザル。人間とサルの望ましい関係を、観察と対策の実践の中から模索する人々のネットワークをめざしています。 by k-saru-net カテゴリ
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